ハーブ・アロマ メルマガ 「佐々木薫先生のエッセイ」
vol.66
アロマの旅~マダガスカル~
猛暑が続いておりますが、お変わりありませんか。夏は香りがいっそう気になる季節です。香りに対する感受性は暑さや湿度によってより高まる傾向があり、むし暑い季節はいつも以上に部屋の匂いが気になったり、ふと香るミントの香りに一段と安らいだり、という経験は誰もがお持ちではないでしょうか。この時期こそ積極的にアロマを活用し、暑い季節を明るく乗り越えたいものです。
夏に楽しみたい香りはいくつかありますが、おすすめのひとつがイランイランです。原産はモルッカ諸島ですが、フィリピンを経由して20世紀初頭にはフランス人によってマダガスカル並びにコモロ諸島で栽培が始まり、今も主要産地になっています。マダガスカル共和国はアフリカ大陸の東側、インド洋に浮かぶ世界で4番目に大きい島です。固有種が多く、稀少生物の宝庫といわれ、精油の原料となるハーブも豊富に栽培されます。イランイランをはじめ、クローブ、レモングラス、パルマローザ、バジル、ベチバー、バニラなど、高品質の精油が生産されています。ラベンサラ、ラヴィンサラなどマダガスカルの自生種も薬効が評価され、精油が輸出されています。
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マダガスカル本島の北西に「ノシ・ベ」という小島があります。ここはマダガスカルを代表するビーチリゾートですが、別称「香水の島」とも呼ばれ、イランイランが島中に自生し、栽培もされています。首都アンタナナリボから飛行機で約1時間。空港から町まで向かう道の両脇にもイランイランの木が豊富に茂り、甘く芳しい風が車の中まで入ってきます。摘み取りは夜明けからで、摘みごろの花をひとつひとつ手で摘んで行きます。私たちが畑を訪ねたのは5月中旬。花は年間通して収穫できますが、特に5~6月と10~11月がベストシーズンです。
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香り豊かなマダガスカルが、近年は森林の減少が続き、地球上で最も生物種絶滅の危機に直面する島になりました。森が減少する一番の原因は人口の増加です。畑や放牧、住む場所を確保するために森が焼かれ、また炭や薬草などによる収入を得るために違法伐採が行われたりしています。
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マダガスカルの森を守るため、失われた森を再生するための保護・保全活動を行うNGO団体があります。人による森林破壊を食い止めるために、森を持続可能な収入源とすることを考え、森の住人たちの生活を支える事業をおこしています。彼らの安定した生活を確保しつつ森の生態系を整えるプロジェクトでは、森の資源であるラベンサラやラヴィンサラから精油を蒸留し、住民の収入につなげています。イランイランもその一助となっています。精油で生計をたてることにより、住民たちに森の価値が理解され、不当に木を切らなくなり、結果、森を守ることにつながります。
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私たちがアロマを活用することが、遠い国の森を守ることに、間接的ですが住民の支援にもつながり、アロマの力は効果効能だけではなく、社会貢献にもつながります。
日本園芸協会 指導部 佐々木薫
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