ハーブ・アロマ メルマガ 「佐々木薫先生のエッセイ」
vol.18
ホーリーバジル
「トゥルシー」が話題です。英名はホーリーバジル(Ocimum tenuiflorum,O.sanctum )、イタリア料理でおなじみのスイートバジル(Ocimum basilicum )の近縁種で、和名をカミメボウキといいます。形状もスイートバジルによく似ていますが、花は紫がかった色で、葉の周囲は鋸歯状、より強い香りがします。
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16世紀にアジアからヨーロッパに伝わり、芳しい刺激のある香りが人気です。いくつかの品種が出回っており、他に、葉が紫のダークオパール、小さな葉が密生するブッシュバジル、レタスのようなリーフレタスバジル、葉がレモンの香りがするレモンバジルなどがその代表です。
スイートバジルの学名のbasilicumはギリシャ語で「王者のハーブ」を表し、高貴な香りと評価されてきましたが、ホーリーバジルはヒンドゥー教では神の化身として崇められ、今なお聖なる植物です。多くのヒンドゥー教徒はトゥルシーの鉢を家の前に置き、育てています。トゥルシーとはヒンドゥー語の「比類なきもの」という意味、「他に比べようのないもの」です。ホーリーバジルの育つ鉢や花壇は、それ自体が祭壇であり、特に雨季の間は、毎朝の礼拝が日課だそうです。精神を高揚させ、家族の繁栄と幸福を導く神性の象徴です。
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伝統療法アーユルヴェーダでは、ホーリーバジルは不老長寿の霊薬として扱われます。中でも、セキ、風邪、発熱などに効果を発することで知られています。ジンジャーやブラックペッパー、カルダモンなどのスパイスとブレンドすると効果的です。ハーブティーで飲むのが手軽でしょう。また、空気を浄化する植物でもあり、鉢を室内に置けば、抗菌、抗ウイルス、防虫などに役立つとされます。
アーユルヴェーダで特にこのハーブを評価するのは、マラリアに対する効果です。原因となるマラリア蚊を追い払い、葉を数枚摂取することで毒を破壊してくれるそうです。アーユルヴェーダの古典によると、マラリアの発熱前の激しい悪寒には患者のからだを葉でこするとよいそうです。日本ではまだマラリアに罹る危険は少ないですが、知識として知っておきたいものです。
インドの言い伝えには「ホーリーバジルがある家には、病気や不幸が入ることができない」という言葉があるそうです。清浄な空気は身体と精神の健康に大きく影響するといってよいと思いますから、空気を浄化するといわれるホーリーバジルは、まさにそんな効果も期待できるでしょう。何よりも爽やかなその香りが、心身を清々しくすることと思います。
*参考図書「奇跡のハーブホーリーバジル〔トゥルシー〕」ヤシュ・ライ著 出帆新社
日本園芸協会 指導部 佐々木薫
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